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2014-11-13(Thu)

彼女は彼女、私は私

「こんなにあるなんて……。これが、市民の生活の重さ、ってことなのね」
Akusa Tau'olは、眼前の机の上にうず高く積まれるだけでは収まらず、机の横の床まで占拠している、ニューマジンシア関連の書類を見て、そう呟いた。
市の予算と決算、商業統計、目安箱に投函された市民の声の集計結果……公開されているものだけでも、恐るべきほどの量だ。
床から積み上げられた書類は、彼女の背丈よりも高く積み上がっていた。
ボイドプールの本戦に向けて、一番習得の難しい不調和の術の修練に励む時間以外の全てを、Akusa Tau'olはニューマジンシア関連の書類を読むことに費やしていた。
バーチューベインがボイドの中へと追い払われ、ニューマジンシアが復興を始めてからの期間だけでもこの量だ。滅びる前の分まで見ていたら、とてもじゃないが時間が足りない。これが悠久の歴史を誇る首都ブリティンだったりしたら、全てに目を通す前に寿命が尽きているだろう。
しかも、これらの書類は人の手によって編集され、集計された統計である。膨大な人の千差万別な運命の記録をそのまんま受け止め、理解することなど、人の子にできるわけがない。それができるとしたら神か悪魔か──あるいはそのように振舞える詐欺師に違いない。

それでも、おぼろげながら分かってきたことは色々とあった。
その全てを記すことは不可能であるが、重要な点は以下の2つ。
1.Mesonaが首長に就任してから今に至るまで、市の財政のみならず、市民の生活は格段に良くなっているということ。
2.それに首長が貢献した点が全くないとは言えないが、大半は運命の悪戯や、思いがけぬ僥倖によるものであるということ。
そして、議事録などを読みながらAkusa Tau'olが感じたことは、その変化にMesona首長が戸惑っており、何か焦っているように思えることだ。
《多分、奴は功を焦って墓穴を掘るはず。今期の最後の評議会が、私にとっての最大の好機だわ》

そのとき、彼女の脳裏に父の言葉が蘇る。
「俺は政治のことは良くわからん。Mesonaを倒すべく立候補することも、別に否定しない。
ただ、沢山の敵と戦ってきた一人の戦士として言わせてもらう。
恥ずかしい真似をしてまで勝とうとするな。正々堂々と、真正面から勝利を勝ち取れ」

《そう。敵失は、私が舞台に上がるための機会に過ぎない──》
Akusa Tau'olは、ムーングロウ首長Financiersが編纂した、前回の評議会の議事録のページを再読し、決意を固めた。

次の評議会の準備を終え、Akusa Tau'olは自室を出て居間へ向かった。
一息ついて、交易で手に入れた茶葉を使った特級品の紅茶を飲みながら、ふと彼女は窓に映る自分の姿を眺める。
戦士とは思えない貧弱な体格。Louの娘だと言っても、最初は誰にも信じてもらえない。
次女は既にいくつかのボスを一人で、父よりも遥かに速く倒している。今はDOOMの三途の川の対岸へ赴き、この季節にしか手に入らない宝物を手にしている。
三女は生まれつき素養のある身を隠す術に加えて、伯母と、ロイヤルシティのムーンゲート前に佇んでいた難民(Louが受け入れて、今では魔法、神秘呪文、不調和の術の達人となった)から魔法を学んでいる。いずれは、この世に20個しかない宝物を手にするだろう。
長男だって動物を扱う能力を更に研ぎ澄まして、そう遠くない日に巨大なドラゴンを使役するようになるに違いない。戦士としての能力だって、いずれは自分を追い抜くであろう。
戦士としての限界が見えた自分にあるものは、母譲りの美声と音感、そして……。

《……私は絶対、勝つわ!》
運命の悪戯なのだろうか。
彼女の晴れ舞台──ボイドプールの本戦、そして首長選挙──は、ほぼ同時期に始まる。
闘いの時はもう間近に迫っていた。
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