2014-10-27(Mon)

ぼくらが龍を狩る理由

注意:凄惨な描写があります。不愉快に感じられるかもしれませんので、ご注意ください。

(回想)
Mesonaは息を潜めていた。
破壊され、瓦礫と化した大邸宅の、辛うじて残った地下室。元の持ち主がどこへ行ったか、今生きているかすら分からぬ。
地上には「ベインの選民」と呼ばれる、バーチューベインという悪魔を崇拝し、それに操られた者たちを組織化したカルトの構成員と、使役されたデーモン、そしてブラックロックゴーレムがうろついている。戦う術も、隠密の技術も持たぬMesonaにとっては、このマジンシアの地上はあまりにも危険な場所であった。
「……あと10日ってところね」
地下室の食糧庫を一つ一つ確かめると、この地下室に居られる日数を計算する。それを過ぎれば、別の家の地下室に移り、食糧が尽きるまでその場所に潜む。マジンシアの豪商の家はどこも豪華で、地下室は食糧だけでなく様々な宝物が眠っていたりする。中には隠し部屋や隠し扉などで巧妙に隠されたものも多く、ベインの選民の連中にも荒らされてない場所もあった。
いずれも、元の住人はもう居ない。殺されたか、他の街へ避難したか。Mesonaは地下室の宝物を、自らのものとすると決めていた。
《……誰も、戻ってくるわけがないわ。戻ってきたのは……私だけ》

かつてMesonaも、マジンシアからの避難船に乗ってとある街に避難した。
マジンシアで生まれ育った彼女が、ここで新しい生活を始めようと酒場へ向かったその道で、彼女は数人の男に呼び掛けられた。
ナンパかな。容姿にはそこそこ自信があった。
しばらく仲良く歓談していたが、名前を聞かれたMesonaは、本名をそのまま答えた。
《あのときは、嘘をつくべきだったのに……》
答えるやいなや、顎に強烈な痛みを感じた。倒れた彼女は、肩を石畳に叩きつけられた。血の味が口の中に広がる。殴られたことが分かったのは、敵意に満ちた男たちの顔を見た瞬間だった。
「Mesonaだと! てめぇか!」
ブリタニアイベント振興協会のMesonaのことは、その悪名も含めて知っていた。しかし、それで何故自分が殴られなきゃならないのか、全く理解できなかった。
「私は、あの人とは違います……」
「るせぇ!」
側頭部を思いっきり蹴られた。周りには誰もいない。身動きしようものなら、すぐに殴られ蹴られた。身体中から鈍い痛みが感じられる。そして──
「やめてぇ!」
その身を包むシャツが破られるのを見て、Mesonaは絶叫した。
そして、首を絞められ、彼女は気絶した。

再び意識を取り戻したとき、日は沈み掛けていた。
冷たい雨が剥き出しのままの肌を苛む。
Mesonaはマントでその身を包むと、港へと向かった。
マジンシアからの避難民を運ぶ船が停泊していた。明日、未だ残る避難民を運ぶため、マジンシアへ向けて出航する。
Mesonaは迷わず船に乗った。

そして、今、このベインの選民の支配するマジンシアの地下でただ一人暮らしている。
今まで何軒かの家を転々としている。いずれ、どの家の倉庫の食糧も尽き、行き場を失うことになるだろう。そうなったら、こっそりと集めていた宝物を持ち出して、マジンシアを出よう。
そのときは、今までのMesonaとしての自分は捨てて、全く違う人として生きよう。
そう思いながら、この地下室の中で、唯一陽の光が差し込む一角を眺めていたとき、それは突然現れた。

《日蝕……?》
それにしてはいきなりだ。差し込んでいた陽の光は突然、断ち切られた。
何かあったのかもしれない。それが、ベインの選民によるものであったら危険だ。しかし、何が起こったかを知らなければ、自分の身を守れなくなる恐れがある。
Mesonaは気配を殺して、這うように階段を上り、瓦礫の隙間から空を仰ぎ見た。

それは、空を覆うほどの巨大な龍であった。
生命なのかすら分からないが、龍の形をして、空に浮かんでいた。
漆黒の闇のような黒。
空高くにありながら、吸い込まれて落ちていくような錯覚を覚える何か。
Mesonaは思わず呟いた。
「深淵(アビス)……」

Mesonaが空を仰ぎ見たその瞬間。
マジンシアの北端でブラックロックゴーレムと死闘を繰り広げていたLouも、それを見た。
「おいおい……まるでマラスの星の海みてぇじゃねぇか!」
その異様さに一瞬気をとられたLouは、ブラックロックゴーレムの一撃をまともに受け、吹っ飛ばされた。
《やべぇ、見とれてる場合じゃなかったな……》
Louはベインの選民によって呼び寄せられたこのゴーレムに向かって、冷たく光る刃を向けた。

ベインの選民はLouにとっての仇であった。
最愛の姉を、その魂を牢獄に閉じ込めたベインの選民。それを「洗脳」ということも、精神に掛けられた呪いを解く術も、彼は知らなかった。
彼にできることは武器を持って戦うことのみ。
船舶技術が発達し、大型船がブリタニアの大海原を行き来するようになった今、彼は船をマジンシアの北に停泊させ、ベインの選民との戦いを続けていた。
後に謙譲のパイの力でバーチューベインをボイドの中に追い払ったときも、Louはその戦場にいた。
しかし、今はいつ終わるかも分からない中、一体でも多くの敵を屠ることしかできなかった。

満身創痍ながらも、ブラックロックゴーレムを倒したLouは、自分の船へと戻った。
それは、変わることなく空にあった。
マラスの星の海とは逆に、空に浮かぶ地底。しかし、通常の自然現象ではあり得ない異常さは、極めて酷似している。
そして、それは龍の形をしていた。
Louは、今まで自分が見た龍の姿を思い浮かべた。Rikktor、Sudiva、そしてStygian Dragon……。
どれとも似ていない。いずれも巨大な龍であるが、大きさが全く違う。
《生命体とは思えない……龍の形をしていながら、形無きもののようだ……》
彼は今までの経験で知っていた。そのような、形無きものほど、恐ろしいものはないということを。
Stygian Abyssの最深部や、Doomの三途の川の対岸をはじめとする、禍々しい場所──そこから「災い」が噴出しているような場所と似た匂いを、Louは感じていた。

それはブリタニア暦359年。
謙譲のパイの力でバーチューベインがボイドの中に追い払われ、マジンシアが解放される、そのわずか一月前のことであった。

──後にLouがStygian Dragonの討伐を始め、Mesonaがニューマジンシアの首長となったとき、ニューマジンシアを再び敵の手に渡さぬため、市が中心となって討伐隊を繰り出すこととなったが、二人の脳裏に蘇ったのは、あの日の記憶。
「災いは、深淵より来る……」
Mesonaは小さく呟いた。

──────────
というわけで、毎週のステドラ討伐のバックストーリーを書いてみました。
プレイヤーは常に「上から目線(笑)」なので、キャラクターが空を見上げて、何を見ているのか、あとは想像で書き放題なんですね。
キャラクターには常に幸せであって欲しいし、書きながらMesonaが可愛そうになってきましたが、今後のストーリー展開の都合上、必要な描写と考え、書かせて頂きました。
不愉快に感じてしまった方には申し訳ないです。
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コメント

No title

おおお!素晴らしい!
キャラクターの過去も交えたストーリー、読んでいて引きこまれてしまいました…
創作とは言え、ある程度事実をベースに基づいて書かれたものと推察致します。
まさに「人に歴史あり」ですな…

前回のトリンシック選挙の際、Taに何度もダメ出しを食らって
「二度とショートストーリーなど書くものか!」と思ったりもしましたが
自分もPAFメンを挑発し、殺しまくってたあの頃のお話や何かを
もう一度書いてみようかな…

No title

Mansematさん>
マジンシアは色々と事件が起こってきたので、結構逸話とかが作りやすかったです。
まあ、これでステドラはおろか、スラ様やDOOMでの討伐ツアー(笑)の理由付けもできましたね。

ギルドメンバーを出すとなると、難易度高くなりそうですよね。
自分のキャラクターにはそれぞれ思い入れもあるでしょうし、それに合っていなかったりすると不快感与えてしまうでしょうし。
私も、他の人のキャラだったらこんな話絶対書けないです……。
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