2016-10-07(Fri)

予兆

《……遂に、城主になったわ。……私じゃなくて、父が、だけど》
ニューマジンシア首長、Akusa Tau'olは、目の前に聳え立つ城壁を見上げていた。

城の入口には、貿易都市に相応しい形状の看板が掛けられている。
彼女は看板の文字を読み……硬直した。
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《……に……西マジンシア城……!》
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城門に掛けられた「今後、この周辺は『西マジンシア』となります」という文言に彼女は激昂し、城門を突破し、城主の館へと飛び込んだ。

「ごちそうさま」
食事を終え、ベッドへ向かう妻の姿を鼻の下を長くして眺める屈強な男。
勢い良く階段を上がってくる足音に気付いたこの城の城主は、階段の方を振り返り、自らに迫る拳をかわそうと身を引いたが、
自分の娘の敵意を剥き出しにした顔を見て怯み──
ボコッ。
──ニューマジンシア首長の渾身の一撃は、その父、Louの顎に命中した。
「ぃてて……何すんだよ!」
痛がってるものの、この程度の一撃がダメージを与えていないことは明白だ。
「父さん! 何考えてるのよ、『西マジンシア城』なんて名前付けて!」
「ええっ?」
「ご丁寧にも、『今後、この周辺は『西マジンシア』となります』なんて書きやがって……こっちにとっちゃエライ迷惑なのよ!」
そう言いながらLouの襟首を掴みあげる。
「ママが決めたんだよぉ」
「……はあっ?」
城主のあまりにも主体性のない発言に脱力し、襟首を掴む力が緩む。Louはその手を振りほどいて、『ママ』がいるベッドへと逃げた。
「ママぁ、首長様がいぢめるよぉ~!」
「あらあら」
Louの長女は、カーテンを開けて、ベッドの上で父が母に抱きついて、その豊かな胸に顔を埋めているところへ歩み寄る。柔らかい手で夫の頭を撫でる姿は、まるで一流の猛獣使いのように見える。
「母さん、何で『西マジンシア城』なんて名前にしたの?」
「マジンシアの西にあるからよ」
母は平然と答えた。
「今後、この周辺は『西マジンシア』となります、というのはどういう意味?」
「西マジンシア城が建っている場所だからよ。この城がソーサリアの皆様に知られていくことで、この辺りが自然と『西マジンシア』って呼ばれるようになるということ」
微笑みながら、娘の質問に答える母に対して、ついつい感情的になってしまう。迸る激情を抑えながら、ニューマジンシア首長としての懸念を伝えた。
「……ただでさえ、うちは予算が潤沢だってことで陰口叩かれてるんだから」
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「航路保安協定でブリタニアの海を掌中に収めようと目論んでるとか疑われている中で、ブリティンの西、ブリティン、ユー、スカラブレイの3都市を結ぶ交通の要所を領土にしようとしてる、なんて誤解されたらどうするのよ!」
「うふふ」
母は娘の言葉を軽く受け流す。
「大体、マジンシアほど脆い、他の都市の脅威になり得ない都市、他にないでしょ」
「……」
「同じ四方を海に囲まれているムーングロウだけど、ライキュームという王の大権ですら侵せない独立した機関と、その島だけで一国として成り立つ可能性すらある領域を擁しているわね。
ユーも、深く、広い森に覆われていて、万が一敵が大軍をもって侵攻してきても、分散させて撃破することは可能。しかも、ハートウッドのエルフが背後に控えている。
ブリティンは言うまでもなく王都であり、市街地だけでもマジンシアの島全体より広い。ブリタニア最大の都市であり、しかも後背地に穀倉地帯を抱えている。カリュブディスですら倒すほど、強いガードに守られている。仮に海上と、主要街道を封鎖されても、びくともしないわ。
トリンシックは強固な城壁に守られ、そしてあの恐るべき魔導兵器を使える首長が君臨している。
ミノックはブラックロックという危険な、そして有用な戦略物資を産出している。ベスパーはそのミノックの流通を握れる場所に位置している。
ジェロームはその東側が海賊の支配する海域だけど、多数の訓練された兵士により、海賊の上陸を阻んでいるわね。
そしてスカラブレイは王都ブリティンに最も近く、山を越えるというのに、見事に舗装された広い街道で繋がっている。ブリティンとトリンシックを結ぶ街道が曲がりくねって走り難いのとは対照的にね」
その通りだ。反論し難いと思った。
「だからこそ心配なのよ。今の繁栄も、ほんの一つの失敗で砕け散る……」
黙り込む娘に、母は話を継ぐ。
「これだけは忘れないで。この城は、私たちの家です」
「……そうね、私たちの家ね」
「あと、もう一つ」
いつの間にか寝入っていた夫の寝顔を見ながら呟いた。
「父さんを政争に巻き込まないでね」

「姉さん、お願いがあるの」
南東の、ブリティン、ユー、スカラブレイの3都市を結ぶ三叉路のほうを遠くに見遣り、思いにふけっていたニューマジンシア首長に、一回り以上も歳が離れた妹が声を掛けた。
「Maria……何よ、いきなりお願いって」
振り返って首を上に向ける。まだ12歳だというのに、自分よりも頭一つ以上背が高い。
「ボイドプールの予行演習、あたしが出てもいいですか?」
「えっ?」
予測してない話に少し狼狽える。
「アンデッド沸きなら、Covetous Revenantを如何に除去するかが戦いの鍵を握る。特効がなくて、与えるダメージが低いのに、やたらと生命力が高い。複数種の敵と接敵する近接戦士が使うわけにもいかないEnemy of Oneを、弓戦士の私なら使えるわ。
Enemy of Oneで+82%。扇動魔曲のInspireを貰えれば、ダメージボーナスが最大+15%。
私に、やらせてください!」
初陣を見事に飾り、見事に呪われたバラを手に入れた妹。猫の人形も手中にしている。
答えは一つだ。
「お願いするわ。必ず、生きて帰ってきて。ご武運を」

────────────────────
というわけで、久しぶりにRPエントリ上げてみました。
何の予兆だ? 意味が分からないぞって?
大丈夫です。私も分かってませんから!
まあ、年末までには何か起こるでしょう。起こってから意味を後付けするつもりです(笑)
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